初めに申し上げて置きますが、これらは全てA/Tのやり方で自己流です。これが正しいと言う訳ではありません。
まずは、ネームを見ながら、大体の構図を取ります。 宙に浮いた人物は描きたくないので、パースとデッサンは最低限考えます。画面の所々に有る×は、透視図法の消失点。この水平ラインが目線になります。 どう言う絵を描くか、頭の中でイメージを固めて、次の段階へ。
1で決めた筈の消失点(目線)を、人物中心にガンガン動かしながら作画。 だって、A/T漫画だから。人物が目立たなきゃ見る価値無し。漫画だから、多少の構図上の嘘も上手く付けば平気。 と、描く内にC(一番右端)の最後のコマの亮を、大きく描き過ぎてしまいました。一コマ目の絵も右に寄りすぎ。 これじゃ、亮の膝下切れちゃうし、光の半分はフキダシ切れ。あらら。それは嫌だなあ、えーと。
私は、一本線で実線を入れてしまうので、最初は至極あっさりした物。線の上を何度もなぞるような事は、苦手な輪郭線以外、余りしません。 ギギギギギ…ガリッ、と一回なぞったら、取り敢えず最初の人物ペンは終わり。 影もタッチも、余り付いてない、出来損ないの状態のまま、取り敢えず全頁、埋めてしまいます。 この段階で、人物の位置のずれ、大きさなどを調整します。詳しい事は下の4で。
人物の実線が入ったら、次は質感と陰影を入れましょう。 下描きの時に色々不満のあったCは、文明の利器コピー機様で下描きをコピー。ずらしたり、縮小して原稿用紙の裏に設置。後はトレースしつつペン入れしました。下描きが消えていない部分は、良く分かるのでは? 具体的に言うと、1コマ目は人物が全体的に左にずれて、ラスコマは、亮の大きさが90%になりました。 亮の指輪、ベルトの裏の模様、服の影、靴の質感などがここで描かれます。 今回の穂邑の私服(ブルゾン)は革製品。それらしく質感を出そうと、細かくカキカキ。根気根気。 ここまでは100%A/T一人の仕事です。
以前、自分だけで作画していた時は、人物も背景も一緒に下描きしました。 が。人の手が入るとそうは行かない。背景下描きに人物がとけ込んでしまうとコトなので、人物が終わってから背景に移ります。場合によってはこの逆もあります。車に乗っている人物、等の場合は、車を描いてから人物です。 Aはアシスト君の労作で↓、他のBCはA/T作成の背景です。
漫画原稿っぽくなって来ましたねえ。5と6は、良く見比べてみると面白いくらい変わっています。 例えば、Aの4コマ目、どうにも気に入らなくて、アシ君が席を外している間に、A/Tが消しゴムで証拠隠滅。 高さパースのきつい3点パースなのですが、横軸と奥行きのラインの取り方が、アシ君と私でずれていて、私感覚を優先。これは、あくまでも感覚の問題です。人間が違えば、感覚は違って当然。 同じくAの1コマ目、勢い線や影付けはA/T。ここらもA/T感覚なので説明しづらく、自分でやる事が多いです。 本当は、今回彼に描いて貰った背景は、この前の頁の物が実に良い感じだったんです。そっちを載せたかったが、こんな風にコピー取って無かったもんな〜〜。くう。
良い感じにクリーンナップされて来ました。 この段階でもまだまだ、しつこく靴や服のライン、足しています。 (例えば、Bの穂邑と亮の靴のタッチ。忘れていたらしく、ここで初めて入っています) 穂邑の髪は殆どつや無しベタなので、せっかくの線が消えてしまいますが、気にしない気にしない。
もうこの段階は、単行本と見比べて貰った方が良いでしょう。縮小したGIFの所為で、トーンが全部潰れてますから。 上の7と比べて貰うと、完成原稿はバックがちょこちょこ色々増えています。 原稿は完成後、私の手許に全て集まって最終チェックを受けますが、この際に「ここ何か欲しい」となった場合、下描き無しで線を入れていってしまう事も多いです。 Bの人物のバックのあちこち、Cのカーテンの模様とか、気分で入りました。
こうして、目一杯の手を掛けて、やっとこさ一本の原稿は完成するのです。 だから皆さん、出来ればきちんと読んでやってね。(笑) 打ち切りになったら、責任持って自費出版しろとか軽く言わないでね(実話)。マジで。