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何と申し上げましょうか。これは時代の寵児「三船 敏郎」に捧げるオマージュ創作小説です。
戦前の日本映画界で主流だった、いわゆるノーブルで上品な美形タイプではなく、時代を背負った骨太な野生児タイプの俳優。
異質故に、初めて見る者を驚かせ、魅了した俳優。三船 敏郎。
しかしその内面は、剛胆で強面の外見とは違い、繊細で気の弱い人だったと思います。
ワンマンな黒澤 明と言う傘の下に納まり、無茶な要望を凡て飲み込み、黙って従っているのを見るに付け、映画の中の姿は虚像であると思えました。
銀幕では度胸があって腕が立ち、男が惚れる男である「三船敏郎」は、実際は努力家で女房気質で口下手で、神経質とさえ言えるタイプだったと思えます。
そうしたギャップを持つ、人間「三船 敏郎」に、私はますます魅せられて行きました。
気が小さい癖に不器用で口下手で、東宝ニューフェイス試験で物議を醸した「三船ちゃん」。
「何が得意ですか」と聞かれて「シュークリームです」と答えたきり黙ってしまったのは、後に言われた「生意気」では無かった筈。
「アプレゲール」の三船のキャラは、調べる内にどんどん漫画じみていきました。
そして噴きこぼれたのがこれです。
これはその時代に生きた俳優に捧げる、それ以後の世界に生きる一ファンのラブレターです。
くれぐれもご注意頂きたいのは、これはあくまで創作だと言う事です。
三船敏郎、岡本喜八、東宝、等、固有名称を使用させて頂いておりますが、事実とは全く異なります。作中人物像は創作であります。
東宝労働闘争等、事実を使用させて頂いておりますが、それはあくまで「モデル」に過ぎません。作品自体はあくまで創作、フィクションであります。
作中ではデビュー前の三船(三船敏郎モデル)と岡本(岡本喜八監督モデル)が、同じ下宿にいた事になっておりますが、二人が下宿を同じくしたのは三船デビューの後。
実際の三船は乱暴者では決して無く、「草薙」なる人物は存在しません。場所も時期も実際とは異なり、凡ての事象は似て(似てるのか?)非なる脳内日本です。
俳優が銀幕のスターだった頃で資料が少なく、実際のキャラクターを掴む所まではいけなかったエセ漫画家の描くオマージュ創作小説。
もしこれらを通じて三船映画に少しでも興味を持って頂ければ幸いです。
また、そこまでには至らぬとも。
楽しんでお読み頂ければ幸いです。
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