狂気の
 
                         Yuta
 

 

午前4時、バー兼ホストクラブ「キッド」……今はもう雇われ店長である穂邑 霧人も
家に帰って静まり返っていた。しかし、仮眠を取るために店内の奥の部屋で一人の男が寝ていた。

ゴトッ……静まり返った店内の中で何か物音がした。
仮眠を取っていた男も、物音にきずき起きあがった。
仮眠を取っていた男の名は蔵馬 宗一「キッド」のメインバーテンダーだ。

「……なんだ?」

蔵馬は物音のあった方へと歩みを寄せた。
台所のちょうど刃物がしまってある辺りに黒い人影があった。
蔵馬は物音を立てないようにそおっと近付いた。

「なんだ、亮か……
何してるんだ?こんな時間に……」

そこにいたのは「キッド」のNo.1ホストの滝村 亮だった。

「なんだ、オッサン起きちまったのか……
寝てたら、楽に死ねたのになっ!!」

その言葉が終わるや否やシャーンという包丁がすれる音がし、
そして亮の手によって高く掲げられた包丁が蔵馬に向かって振り下ろされた。
その時、蔵馬はふと思った。

(店長のパトロンが三人も殺害されたのは、亮の仕業だったのか……)

午前7時……穂邑は家で寝ていた。
しかし、ピンポーンという音で目が覚めた。

(沙門さんかも!?)

などと思いながら、勢い良くドアを開けると、そこにいたのは、
自分の唯一の親友、亮だった。

「なんだ……亮か。ぼくに何か用?」

「せっかく会いに来てやったのに、なんだとはなんだよ。
まぁ、上がるぜ。店長!」

そう言い、勢い良く部屋の中へ入っていった。
そして、それに続いて穂邑も奥へ戻っていく。

「で、どうしたの、亮?」

「俺さ……店長の事好きになったみたい……」

そう言って亮は穂邑を押し倒した。

「ちょっ、ちょっと亮!!冗談はよせよ……あっ……やめっ……
……?」

急に体が軽くなり、穂邑が目を開けると、そこには包丁を振り下ろす寸前の亮がいた。

午後1時……穂邑が住んでいる部屋の前に一人の男がいた。
現在、鹿野組組長、そして穂邑が愛する男、沙門 天武だ。

「おーい、ボウヤいねえのか?」

チャイムを一度鳴らした後、何度か扉を叩いた。
いつもなら直ぐにでも出てくるはずの穂邑が出てこない。
なにか嫌な予感を覚え、力一杯扉を殴った。
ドガッという音と共に、扉は押し倒されそして、沙門の目に、室内の様子を映し出した。
そこは、血が壁や天井に飛び散っており、
なんともいえない血の匂いがムッと漂った。
内ポケットからピストルを取りだし、慎重に奥へと歩み行った。
そして一番奥の部屋のテーブルに信じられないものが置かれていた。

-首-

それは確かにこの部屋の主の首だった。
胸がチリチリし、目に温かいものがこみ上げてくる感じがした。

「誰が……」

声にもならない声でつぶやいた。
そして、次の瞬間、冷たいものが首筋に触れた。

「なぁ、あんた、俺とSEXしねぇ?」

「てめえか!!」

 

 

 

「ケッ……ドイツもコイツも店長、店長か……」

その部屋には生きている人間は一人しかいなかった。
首辺りから大量の出血をして倒れているヤクザも、首が切り落とされた一人の青年も、
完璧に息は無かった。

「あとは、李 朝民とパトロン二人か……」


 

亮は嫉妬していたのだ。
誰よりも強く、たくさんの人間に必要とされている親友が。
そして、自分も必要としているうちの一人だという事実が、
さらに、忌々しかったのだ。

……何、俺、気違い連続殺人犯かよ? こっちの楽しみは俺は分かんねえな〜〜〜。
ほほう。じゃやっぱり眼鏡君(仁木の事)の様にどこぞの男にハメられたりハメたりの方が宜しいですか、亮クン。
ババアは慎みがねーからその発言だろーが。つーかあんた、すっかり毒されたよな。昔はそう言う発想無かったんじゃねーのかよ。
(青二才ホストに口で負けてなるもんか!) そーなの、すっかり毒されちゃってさぁあ。今じゃ、あんたを穂邑と絡ませようか、蔵馬と絡ませようか、はたまた光とヤらせちゃおっかな〜〜、と楽しい日々よ。
そ、それは……どれも止めろ……!!
(内心滅茶苦茶亮に同意)
  評価点(10点満点) A/T酷点:7亮怒点:9