穂邑の願い

           by さの


 
 膝に頬をつけたまま、彼は呟いた。
「僕の女王様になって下さい」
「何だと?」
 青年が顔を上げる。
 黒曜石の瞳は、先程までとは違っていた。脅え、悩んでいる頼りない瞳はそこには無く、熱い光を内に秘めた、堂々とした輝きがあった。
 沙門の方が気圧される。装っていた平静の仮面が剥がれそうになる。
 青年の不意の告白に対して、沙門が何も言わなかったのは、故意ではない。何も言えなかったからなのだ。うろたえていた。戸惑っていたのだ。
 青年の目がきらりと光った。
「いいんですね?」
「……ああ」
 他にどう答えることができただろう。青年は呆れるほどの素早さでクローゼットを開いた。奥から『マル秘箱』と書かれた段ボール箱を取り出す。
(『マル秘箱』?)
 段ボール箱を逆さにした穂邑は、ぶちまけた中身を山に積み上げると、瞬く間に沙門に取りつき、服を脱がし始めた。
「おい、あんた……」
 呆気にとられた沙門が何か言いかける暇もなく、身ぐるみ剥いでしまう。
「サイズが合えばいいけど……沙門さんの為に海外から通販で取り寄せたんです。日本人サイズじゃ間に合わないでしょ?」
「何を……てめえっ!」
 下着まで引きずられ、拳を振り下ろしかけると、美しい顔の中で黒い瞳が哀願するように濡れている。沙門は拳を戻した。
「好きにしろ」
 無愛想に低い声で呟く。穂邑は嬉しそうに微笑んだ。
 やがて沙門の、2メートル100キロ、いくつかの刀傷と、得体の知れない引き攣れのある、鍛えられた逞しい肉体は、点々と小道具めいた黒の衣装で覆われていった。
 てらてらと光るビニールレザーのビスチェ、ぎりぎり前だけを覆ったTバックの本革ビキニショーツ、凝ったレースのガーターストッキング、顔には蝶をかたどった黒マスク、ピンヒールの編み上げブーツに、手には革を縒り合わせた鞭。
「ああっ、完璧っ!」
 耐え切れぬといった穂邑の喘ぎ声が漏れた。
「そのヒールで僕を踏んでっ、鞭でぶってっ、犬と呼んでっ、お仕置きしてっ、いじめていじめて沙門さん!」
 わずかに身を引きながら、沙門はこの青年に心を惹かれたことを、早くも後悔し始めていた。
 
 

終わり

さ、さのさんの所でもっと!

ぐおえぇぇ〜〜〜!!
想像しちまったじゃねぇかっ! この筋肉親父のボンデージファッションをさ! どうしてくれんのよ !
この手の格好の女は知ってるがな………何で、俺だ?
肌色、黒、肌色。それって肌、毛、ボンテージだろ。気色悪い事この上ねぇっ!!
でもこう言うのに「たまんねぇ」って言う………女は居ないと思いたいが、男はいるんですかね沙門さん。こいつ以外にも。
何を俺に聞いていやがる。俺が知るか。
確かに穂邑なら貴方がどんな格好しても確実に喜ぶな。ボンテージしかり、ウルトラビキニしかり。ポージングして穂邑に「キレてます!沙門さん!!」と言われた事などはちなみに……?
(鉄拳制裁)
  評価点(10点満点) A/T酷点:7沙門怒点:7